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1974年12月30日生まれ、埼玉県出身。東京工芸大学芸術学部映像学科を卒業後、映画業界に入り、熊切和嘉監督、豊田利晃監督、大森立嗣監督に師事。以降、橋口亮輔、横浜聡子、石井裕也ら日本映画界を牽引する監督たちの現場で助監督を務める。チーフ助監督として参加した作品に、熊切和嘉監督『青春金属バット』(06)、『フリージア』(07)、『海炭市叙景』(10)、大森立嗣監督『ケンタとジュンとカヨちゃんの国』(10)、『まほろ駅前多田便利軒』(11)、『まほろ駅前狂騒曲』(14)、『セトウツミ』(15)、横浜聡子監督『ウルトラミラクルラブストーリー』(09)、武内英樹監督『テルマエ・ロマエ』(12)、『テルマエ・ロマエⅡ』(14)、石井裕也監督『舟を編む』(13)、橋口亮輔監督『恋人たち』(15)など多数。自ら手がけたオリジナル脚本によって本作で長編劇映画監督デビューを飾る。
「家族」とは何か、知りたくてこの脚本を書いた。
「家族」とは何か、あまり考えたことがなかった。

団欒というものにほとんど記憶がない。ウチの食卓にはいつも一人いなかったから。
だから、父の帰りが遅くて二人いない日があっても気にならなかった。
家族全員が集まるのは正月か法事。
家族とはそういうものだと思っていた。

いつもいなかった一人、兄が本当にこの世からいなくなった。
突然すぎて、私たちは悲しんでいいかさえわからなかった。

残された私たちは毎日顔を合わせるようになった。
葬儀の後の干からびた寿司桶の前。
納骨の後に行ったハンバーグを溶岩石でジューッと焼く鉄板の前。
みんな黙って食べていたが、私はその情景に思わず笑ってしまった。
ウチの久しぶりの家族団欒だったからだ。
私はその時、初めて「家族」というものを考えるようになった。

「映画」というものに答えがないように「家族」というものにも答えはないだろう。
しかし、答えを知りたくてもがいてしまうのは人間の業だ。
もがいた先に憎しみや怒りや悲しみが見えたとしても。

脚本を書き終えても答えは見つからなかった。
ならば、作りながら更にもがけばいい、と思った。

今回、初めて出会う「家族」と一緒にもがいて映画を作り上げればいい。
そこに見える家族の風景。
私が最初の目撃者となりたい。
監督・脚本 野尻克己